第19回(平成24年度)旅の文化賞決定

 

「旅の文化賞」は、独創的な旅の体験や学際的な研究などによって、旅の文化の向上に貢献した方々に贈られるものです。平成24年度の受賞者は、「旅の文化賞」として野本寛一氏(近畿大学名誉教授)、「旅の文化奨励賞」として常見藤代氏(写真家)にそれぞれ決定しました。

野本氏は1937年生まれ。農山漁村で暮らす人々の暮らしを、とくに自然環境との関わりから考察し、環境民俗学とよぶ独自の分野を開拓されました。その研究方法は、一貫して徹底的なフィールドワークによる観察と聞き取り調査にあり、現在も各地に足を運んで、人々の生活誌を記録し続けておられます。近年はとくに、日本人が守り伝えてきた景観に対して、古代からの自然への畏れや信仰が基盤にあることを考察。それらの景観が農山漁村の暮らしとともに崩壊しつつあることを危惧し、「神々の風景」ともよぶべき日本人の原風景を守ることの大切さを訴えておられます。『焼畑民俗文化論』、『生態民俗学序説』、『軒端の民俗学』、『神と自然の景観論』、『地霊の復権』など数多くの著書があり、長年の旅から積み重ねてこられた数々の業績が高く評価されました。

旅の文化奨励賞の常見氏は、中東やイスラム圏の人々の暮らしを中心に取材を続けている若手写真家で、旅の文化研究所の季刊誌『まほら』でも、46号・59号・70号の「三眼レフ」に掲載されています。大学在学中に休学してインドネシアを旅し、半年間に27軒の民家で共同生活を経験。その後、民間企業への就職を経て、写真家としてのテーマを求めてアジア・アフリカへ放浪の旅にも出ています。2003年から7年間、数回にわたって、エジプトの砂漠でひとりで遊牧生活を続けるホシュマン族の女性とともに生活し、その取材をもとに写真展を開催、好評を得ました。2010年には八ヶ岳で写真展と田舎暮らし体験ツアーも企画するなど、人と自然とのあり方を実践的に考えようとする姿勢に対して、今後のさらなる活躍が期待されます。

「旅の文化賞」「旅の文化奨励賞」の表彰式は、4月15(日)に開催される「第18回旅の文化研究フォーラム」にて行われます。また同日に、受賞者である野本寛一氏の記念講演も開催を予定しています。