「第18回公募研究プロジェクト」中間報告

 平成23年4月にスタートした第18回公募研究プロジェクト(4件)の研究経過が、次のとおり報告されました。

医療が観光となるとき
  ―スリランカにおける伝統医療アーユルヴェーダの観光化に関する文化人類学的研究―
 
梅村絢美(首都大学東京大学院 博士課程)
   スリランカの伝統医療アーユルヴェーダがグローバリゼーションや近代化の中で観光化される過程を明らかにする研究。7〜8月に、アーユルヴェーダの診療を専門に行うリゾート施設や診療所でフィールドワークを実施しました。経営者や医師、患者へのインタビューのほか、施設周辺の社会的環境も含めて調査を行い、診療や施術のみならず、食事や設備などのあらゆる側面においてアーユルヴェーダの理念が一貫して反映されていることが明らかとなりました。今後はデータの整理を進め、再度現地調査を行う予定です。

 
移動民をめぐるツーリズム
  ―インド・ラージャスターン州におけるキャメル・サファリを事例として―
 
中野歩美(熊本大学大学院 修士課程)
   インド・ラージャスターン州のビレッジ・ツアーについて、その変遷と現地の人びとへの影響を考察する研究。8〜9月にジャイサルメール県でフィールドワークを実施し、ビレッジ・ツアーが組み込まれた「キャメル・サファリ」とよばれるツアーの実態について調査を行いました。それにより、当該地域の観光の変遷や、ジプシーとして踊りを披露する出稼ぎ女性たちの存在などが明らかとなりました。今後は収集したデータの整理を進め、政治的背景や理論的枠組みを考慮しながら成果をまとめる予定です。
 
遊牧地域の近代化と草原の生態環境問題
  ―内モンゴル・シリーンゴル盟の「生態移民」プロジェクトから―
 
那木拉(千葉大学大学院 博士課程)
   中国・内モンゴルの砂漠化対策として実施された生態移民政策の実態について、遊牧地域の近代化という視点から検討を加える研究。7〜9月に牧畜民の移住先のひとつであるシリーンホト市欣康村という生態移民村で現地調査を実施し、行政担当者や住民からヒヤリングを行いました。その結果、移住の経緯や、元の放牧地への回帰現象などが明らかとなりました。今後は調査データの整理を進め、牧畜民と都市民との狭間で流動を余儀なくされる彼らにとって、近代化がいかなる意味を持つのかを考察する予定です。
 
旅する芸能「俄」の諸相
  ―その伝播と受容を中心に―
 
松岡薫(筑波大学大学院 博士課程)
   北部九州で現在でも演じられる芸能「俄」を対象に、都市から持ち込まれた芸能がその村の芸能へと変化していく様相を、性格の異なる三地域の事例の比較検討から明らかにする研究。夏から秋にかけて、各地の祭礼の中で演じられる俄の参与観察をほぼ終了し、形式の違いの一方で、移動を伴うことや、地域の特定の青年たちによって担われているという共通点が明らかになりました。今後は、演じる人びとの思いや演じられる場の役割などにも留意しながら、データの整理・分析を進める予定です。