「第24回旅の文化研究フォーラム」を開催

さる4月8日(日)、東京・白金台のシェラトン都ホテル東京にて「第24回旅の文化研究フォーラム」を開催しました。

まず第1部の研究発表では、この3月末で研究期間を終えた第24回公募研究の方々3名が、一年間の研究成果を発表しました。発表者と発表テーマは下表のとおりです。

その後、「第25回公募研究プロジェクト」の採択発表式と、「第25回旅の文化賞」の表彰式、旅の文化賞を受賞された菅波茂氏による記念講演を行い、後半の第2部は、「海外旅行事はじめ―幕末・明治の雄飛行―」というテーマでパネルディスカッションを行いました。パネリストは、石森秀三氏(北海道博物館長)、岡村隆氏(作家・探検家)、趙怡氏(東京工業大学非常勤講師)、コーディネーターは、当研究所の山本志乃研究主幹。

今年は明治元年から150年という節目にあたり、近代日本の歩みを再考する試みが各地でなされています。そこで今回のパネルディスカッションでは、それまでの鎖国から開国・開港へと大きく政策が転換し、海外渡航への道がひらかれた幕末・明治期の日本人の旅をテーマとしました。

まず石森氏が、日本が開国した1860年代は、世界的にみてもグローバルなインフラが整えられた第一次観光革命とよべる時期にあたり、文明システムとして旅の装置と制度が確立したこと、そこから欧米の富裕層の中に世界一周を試みる旅行家も現れたことに触れ、岩倉使節団など海外渡航の先鞭をつけた人たちが、先進諸国の文明の光をみる「観光」を実践し、近代国家への成長を模索していたことを指摘しました。続いて趙氏は、日本に先立って清国から欧米に派遣された使節団の実態を紹介。元アメリカ公使を正使とした使節団派遣の背景や、日本の使節団との比較などから、両国の近代化の差異について述べ、日清戦争後の日本への留学生派遣についても言及しました。そして岡村氏は、明治以前から盛んだった北方探検や、その後主として軍人によって実践された未開拓地域への探検行を時代背景とともに紹介し、明治期に設立された日本山岳会が果たした学術的・社会的な役割について指摘しました。

これらの議論から、時代の転換期における旅のダイナミズムが浮き彫りとなり、近代における「旅の文化」の諸相を掘り起こす必要性を改めて確認することができました。

「第24回旅の文化研究フォーラム」発表者と発表テーマ(レジュメはこちらをご覧ください)

氏 名所 属研究題目
えんどう りいち
遠藤 理一
北海道大学大学院
博士課程

占領期日本の観光空間における「演出」と「発見」をつうじた
ナショナリティの再構築
かるべ のりこ
軽部 紀子
早稲田大学大学院
博士課程
海を渡った文化の真正性の形成
―カリフォルニア州における、ハワイ先住民の伝統舞踊である
フラの社会的機能を事例に―
なかの まきび
中野 真備
京都大学大学院
博士課程
国境なき海域ネットワークと漁撈知に基づく「漂海民」
バジャウの移動に関する研究