「第24回公募研究プロジェクト」中間報告

 平成29年4月にスタートした第24回公募研究プロジェクト(4件)の研究経過が報告されました。このプロジェクトの研究成果は、4月に開催する「第24回旅の文化研究フォーラム」で口頭発表される予定です。

日本の山岳空間における登山とツーリズム
―登山イメージの変化と地域の対応に関する地理学的分析から―

猪股泰広 (筑波大学大学院 博士課程)

日本の近現代における登山と山岳空間の関係と変容を考察する研究。登山シーズンにあわせて、上高地を中心とした北アルプス南部山域、長野県の中央アルプス北部山域、長野・山梨・静岡の三県にまたがる南アルプス北部山域、さらに筑波山でも現地調査を実施し、観光協会や宿泊施設経営者などから聞き取りを行いました。それにより、1980年代を境に、交通インフラの発達や来訪者の多様化などから、従来の「登山者」と「非登山者」の境界が不明瞭となってきたことや、登山基地の性格に変化が生じてきたことなどが明らかになりました。今後は雑誌の記事なども参考に「登山イメージの変化」について考察を進める予定です。

占領期日本の観光空間における「演出」と「発見」をつうじたナショナリティの再構築

遠藤理一 (北海道大学大学院 博士課程)

占領期(1945〜52年)の日本において、どのように観光事業や旅行が行われていたのかを、とくにGHQや朝鮮戦争時の米陸軍第八軍(米八軍)による観光の実態に注目し、戦後日本のナショナル・イメージやアイデンティティとの関係性から探る研究。9月にアメリカの国立公文書館等で資料調査を行い、GHQ経済科学局内の観光サービス課や米八軍に関する文書を入手しました。それにより、これらの機関が戦後日本の観光振興に果していた役割や、観光旅行の行程などの詳細が浮かび上がってきました。今後さらに分析し、敗戦後の占領期における観光業の再形成のプロセスについて考察を進める予定です。

海を渡った文化の真正性の形成
― カリフォルニア州における、ハワイ先住民の伝統舞踊であるフラの社会的機能を事例に ―

軽部紀子 (早稲田大学大学院 博士課程)

ハワイ先住民の伝統舞踊であるフラの真正性の多様性を、アメリカ・カリフォルニア州における事例から検討する研究。8月から渡米し、南カリフォルニア州におけるフラのイベントの観察や、関係者へのインタビューを行いました。その結果、実践者たちの間で、カリフォルニア州のフラに独自の特色を持たせ、新たなルーツを確立しようとする意識があることを確認できました。今後は北カリフォルニア州でフィールドワークを実施し、「本場」のフラとの差異化や同一性への認識、現代におけるフラの創造性などについて考察を進める予定です。

国境なき海域ネットワークと漁撈知に基づく「漂海民」バジャウの移動に関する研究

中野真備 (京都大学大学院 修士課程)

インドネシア・バンガイ諸島に居住する「漂海民」サマ(バジャウ)を対象に、海を舞台とした彼らの海域ネットワークと伝統知を明らかにする研究。8月から10月までスラウェシ島の集落に滞在し、村人の移動・移住歴、親族ネットワーク、漁撈知などについて調査を行いました。それにより、集落が航路上の要所に位置することや、特殊海産物の仲買人の移動性の高さ、漁師の日々の移動に関わる漁撈知の詳細などが明らかになりました。今後は現地で収集したデータの整理を進め、サマ人の海域ネットワークの形成についてさらに考察を深める予定です。